ジョバンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナの傑作のひとつ、Super flumina Babylonis(バビロ ンの流れのほとりで)をお届けする。 この曲は、詩編 137 編 1-2 節がテキストとなっており、新バビロニアの王ネブカドネザル 2 世によるエルサレム陥落によりバビロニア地方へ捕虜として連行された「バビロンの捕囚」の一シーンを描い ている。捕囚され、連行されたユダヤの民が、故郷のシオンを思って膝をつき、涙を流すという、哀 しくも美しいシーンだ。テキストに「柳の木に竪琴を掛けた」とあるが、これは、この曲に使われている詩編 137 の部分についで、 第 3 節から第 4 節にかけて述べられている内容による―― 『わたしたちを嘲る民が、楽しもうとして「歌って聞かせよ、シオンの歌を」と言うから。(3) どうして歌うことができようか 主のための歌を、異教の地で。(4)』 つまり、神を嘲笑するような人たちの前では、神を賛美する歌など歌えるものか、という、強い信 仰心の表れなのである。 エゼキエル書によると、ユダの捕囚民の大部分は、バビロニアにあるケバル川沿いに移住させられたとあるが、この曲の冒頭では穏やかな川の流れを彷彿とさせる、美しく穏便なポリフォニーで始まり、その後『跪き、涙を流す』場面では一転、決然としたホモフォニーが現れる。どれだけ、このシーンが『非日常』であり、『悲劇的な出来事』だったのかを、見事なレトリックで物語っているといえる。また、 曲の終わりには、各パートに3 拍子が隠されており、上に書いた『強い信仰心の表れ』を『完全な数に よる拍子=3 拍子』で表現している。なお、この終盤に現れる 3 拍子は、分母が違う2 種の3 拍子が混 在しており、幾何学的な美しさを形成している。 音楽史上、最も美しい曲を、是非楽しんでいただきたい。
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作曲者: G. P. da Palestrina 校訂者: 松下耕 声部: SATB 伴奏: アカペラ 言語: ラテン語 演奏時間: 3’30”-4’00” ページ数: 12