わずか 5 節からなる短い詩編第 15 編は、聖書の中でも作曲されることは決して多くない詩です。 詩編の中でダビデ王は、敬虔で、正直で、信心深い、正義の人の高潔さと賛美を歌います。隣人を愛し、故意に間違った行いをせず、公正で、正直で、心から真実を語る者だけが、聖なる場所にいける、つまり救われるということを強調しているのです。 旧約聖書において、正義の人への褒美は、「これらのことを守る人は とこしえに揺らぐことがないでしょう。」とあります。(日本聖書協会) ほかの多くの詩編でも同様の言い回しが見られるこの最後の言葉は、あらゆる訳語の中で最も意味と響きが美しく、拙作の根幹を形成しています。 in aeternum( 永遠に)という言葉は、ロ長調で歌われる他声部によるオスティナートの上に、対極である嬰イ長調で 2 人のソリストがピアニッシモで歌うことによって、その永続性を表現しています。これは、報いを受けた正義の人たちの超然とした世界を、遠くでぼんやりと呼び起こそうとするものです。 幻影の後、短いコードで現世の行いと状況に対する警告が繰り返されます。qui facit haec、つまり、永遠とは正しい者にのみ救いがもたらされることを意味します。 モテット風のセクションが絡み合うこの曲では、ピアノの役割は、バッハのコラール前奏曲(BWV645, 649)や、ジェルジュ・オルバーンの作品(ミサ曲第 6 番 : Benedictus/ Agnus Dei、ミサ曲第 9 番 /Benedictus、PASSION TO HUNGARIAN WORDS、HYMNUSなど)で見られるものと似ています。序奏で聴かれるリトルネッロ的なミクソリディアの音素材は、作品全体を通して使われます。あるときは明確に、あるときは反復形として、あるときは変奏として、あるときは単に特定のパートのモチーフとして。 3 度音程で構成される下降旋律の 1 つは合唱パート全体にも現れるので、この作品は単一主題であると感じられやすいです。 この作品は徹底的にポリフォニーの形式で書かれており、16 世紀の声楽曲のスタイルや技法をそのまま取り入れています。跳躍した旋律よりも小さなステップの音階、模倣、音符・声部・リズムの補完、さらにはマドリガルの伝統であるワードペインティング(歌がテキストを文字通りに模倣する音楽技法)も見られます。 例えば、“monte”(モンテ)という言葉では、旋律がドーム型をしており、この「弧」の形が、詩編の中で描かれる聖なる山、シオンを想起させます。
製本版とデジタルスコア版(ダウンロード版)の2種類あります。以下でどちらかを選択して下さい。
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【演奏動画】